陽だまりのOrange

アラフォーおかん丸山担の呟き

【祝・丸ちゃん西田さん再タッグ ドラマよつば銀行】映画 泥棒役者 エキストラレポ・ドキュメンタリー《後編》

〈前編より:

エキストラ当選→神立ち位置により、満を持して登場した丸ちゃんと急接近、からの思いがけず離れてしまった距離‥一体どうなる?(少女漫画風に書いてみましたがただの物理的な距離のことです)

※2017年2月の川口駅前撮影エキストラ参加。当時のメモ書きを元にドキュメンタリー風に書いています。

※前編は一番下↓まで送るとお読みいただけます。

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先程ほぼ目の前2mほどに迫ってニアミスしたあの強烈なもじゃもじゃ頭の彼へメンタルの殆どを持っていかれ、僅かに残った思考回路で最初の立ち位置から居なくなってしまって助監督さんが違う人を置いてしまうかな、という懸念をぼんやりだが抱いていた。目の前を行き交うスタッフの数は相当数で、先ほどの立ち位置もほぼ見えない。勿論彼の姿は言わずもがな、焦燥ばかりが募った。

 

ようやく会えた歓喜、しかし喜びを噛みしめる間を与えられるどころか大股で距離を詰められ勝手に狼狽していた先ほどが嘘のようだ。

離された先、元々その場に置かれていた他のエキストラの方々はまだ訝しげな表情をして行き交うスタッフを眺めている。距離があるため丸ちゃんの現場入りにまだ気づいていない人も多いようだった。

‥最悪遠くからでも見られるなら‥ 

そう思うしかなかったが、ぶつかりかけるほどの距離にいた先ほどとの落差があり過ぎた。

 

だがスタッフの準備や再打ち合わせが終わり、つんのめりかけた私に優しい言葉をかけてくださった神対応の権化・西田監督が助監督に言い含めておいてくれたのか定かではないが、ありがたいことに助監督はちゃんと私を見つけ最初の立ち位置へ戻してくれた。

 

そこはあの陸橋の曲がり角、はじめと美沙の待ち合わせ場所の僅か後方、カメラ脇。

 

そこへ、既に丸ちゃんがスタンバイしていた。

メイクさんにもじゃもじゃを直してもらっている。

距離にしたらおそらく5~6m程度というところ。

そのあまりの至近距離にまた一気に現実感から離され、ともするとぼんやりしていきそうな意識を何とか捕まえその姿を眺めた。

 

しつこいようだが初見のもじゃもじゃの印象がやはり相当強い。70年代のフォーク歌手かのような髪型は非常に目を引き、通行規制されながら遠巻きにしている一般の方の相当数の視線を奪っていた。泥棒だってことなのにこんなに目立つビジュアルでいいのか、やっぱり喜劇だから見た目の格好良さよりキャラ重視か‥何か答えを見出そうとせんばかりに穴のあくほど見つめた。

 

そのモジャを搭載した彼はほんの少し頬がこけたような印象、例によって役のため絞ったのだろう。移動の疲れが僅かに見える気もしなくはなかったが、穏やかな眼差しで周りのメイクさんスタイリストさんらスタッフさんと話し、笑いかける。

ーライブの時フロートでどんなに近くに来てくれてもあっという間に遠くなっていくスーパーアイドル丸山隆平が、ステージでもなんでもない同じ陸橋の上のすぐそこにずっと立っている。

状況を改めて噛み締め、その表情を見つめて脳内からエンドルフィンがダダ漏れていくのを感じつつ、何か妙な感覚を覚えた。

 

しばらく眺めていて、急に理解した。そりゃそうだ。

バラエティでもライブでもMCでも、カメラが回る前で彼は「アイドル丸山隆平」のパフォーマンスをしてくれているのだ。

目の前の、大貫はじめという役に入る前の彼は役者として準備をする「素の丸山隆平」と言える気がした。

時に無心な表情、何か考え事をし思い出すような目つき。スタッフと言葉を交わしながら見せる自然な笑顔。

後から思ったことだが、ライブのメイキングでメンバーがカメラを意識せず、または気付かず懸命に準備に臨んでいるのをそっと撮っている時の姿とわりと近いと思う。

ただメイキングが動なら、見ている丸ちゃんは静だった。

 

僅か数mの距離にいるそんなナチュラル丸ちゃん(髪型以外)を見つめ、頭はボーっとし、足元はやたらフワフワし変な浮遊感に苛まれていると、撮影準備を進めていた監督が彼のところへやってきた。

ああようやく、という思い。仲睦まじい友人でもあるという彼ら。仕事上とはいえどんなコミュニケーションを取るのか。

だが殆ど前置きなく、監督は身振り手振りを交え熱心に話し始めた。丸ちゃんは真剣に聞きながら言葉を交わす。

ーそうか。これが上で書いた「静」の準備の賜物なのだ。求められたらすぐ出せるようメンタルの準備を整えておくこと。こちらは初見なのでつい親友ともいえる方とのコミュニケーションに少しワクワクしてしまったが、真剣勝負の場なのだ。

何よりも、多分だが時間が押していたのかもしれない。おそらく15時近くになっていたかと思われた。

 

そんな彼らを眺めていると、傍らからこんな女性の声が聞こえてきた。

「初対面でデートのシーンっていいよね」

 

なにぃ!?

 

即座に耳をすます。横目で見ずともわかる、カメラ脇に立たせてもらっている自分以外付近にいることが許されているのはスタッフだけだろう。

女性スタッフ同士と思わしき、僅か後方から聞こえるその会話をもっと聞こうと神経を集中させようとしたが、俄かに周りの話し声も多くなりなかなか上手くいかなかった。

もういっそ振り向いてみようかと思った時、脇を小柄な女性とスタッフが通り過ぎ、監督と丸ちゃんに近づいていった。

先ほどの薄手のワンピから衣装替えをした高畑さんだった。

 

あの陸橋の角、丸ちゃんから正面がカメラだとして、そのカメラの右脇にいる私からは丸ちゃんがこちらを向き、その丸ちゃんに正対している高畑さんの後姿、その脇に立っている監督の横向きの姿が左斜め前に見えている状態。

真後ろでなかったため、丸ちゃんが高畑さんと対面する表情がよく見えた。

ー先ほどの女性スタッフの声が蘇る。

丸ちゃんは、監督に紹介されている様子で、笑みを浮かべながらも明らかに緊張しているようだった。

 

ーそうか。

彼らはこれが初対面でこれからデートのシーンを撮るわけか。

 

 なんという場面に遭遇したのだろう。ミーハー心が頂点に達し、ガン見・ガン聞きするべく神経を集中した。

 

とはいえさすがに話し声が丸聞こえな距離ではない。

初対面の演者の雰囲気を良くしようと何やら饒舌に話す監督、クスクス笑う高畑さん、唯一顔が良く見える丸ちゃんは、人の良さそうな笑みに緊張の色を滲ませ、監督の話に相槌を打ちながら高畑さんを見つめていた。

ー後に雑誌のインタビューで、彼はこの時のことを「とと姉ちゃんを観ていたから「本物や!」と思っていた」などと答えている。

ちなみにこの時散々耳を澄ましはっきり聞こえてきたことは、監督が「カレー」と連呼していたことぐらい。その時は近くにいるスタッフも含め笑い声も聞こえて盛り上がっていた。美味しいカレー屋さんの話でもネタにしていたのか否か。 

 

そして談笑後、撮影準備のためか監督はいなくなり、その場にはスタッフ数名と丸ちゃん高畑さんだけとなった。まだ彼らは向かい合った立ち位置のままだった。

さあどうするの、と思って尚更ガン見した。稀代のムードメーカー丸山氏‥

しか意外にも彼ははにかんだ様子で、おずおずと笑みを浮かべ、あまり話らしい話が出来ているようには見えなかった。

 

えっ‥こんな顔すんの‥照れて緊張してる‥?

いや、あの丸ちゃんがそんな。初デートの演技の打ち合わせかもしれない‥

ていうかもうハニカミ王子やん。

ー取り敢えず可愛いがダダ漏れであることだけは間違いなかった。

 

しかしそんな甘い時間はあっという間に過ぎ、いよいよ撮影。助監督が私へ、午前中と同じく、合図をしたら急ぐ感じに早歩きで歩き去るよう指示をした。戻ってきた監督と演技の打ち合わせなどをしている様子の丸ちゃんを横目にバッグを握りしめスタンバイする。

本番。私はカメラが回り出してから殆どすぐ歩き出し丸ちゃんの後方を通り過ぎ陸橋を渡り切らねばならない。そのシーン、二度ほど撮ったかと記憶しているが、彼の本番の演技は、渡りきって振り向いた頃にはちょうどカットがかかるタイミングくらいで殆ど見ることが出来なかった。

※円盤特典の「デートもろもろ」ど頭のシーン。再生直後に手前を横切る女がおりますね‥そいつです。横からも撮っていたとは知らなんだ‥

 

とりあえず元の立ち位置に三たび戻され待機。監督がスタッフさんと映像を確認している。

その間の丸ちゃんはカットがかかった後、高畑さんと共にカメラ後方に用意された椅子に戻り腰掛けていた。二人だけではなく、高畑さんのマネージャーではないかと思われる人が彼女の横についている。

たった今一緒に演じ、更に第三者がいるというクッションが少し緊張を和らげたのか、彼らはなかなか楽しげに会話をするようになっていた。何を話しているのかは全くわからなかったが、話が弾んでいるようには見えた。恋人役、心の距離は演技に表れる。少しでも仲良くなり距離を詰めようとする意識が何とはなしに感じられる気がした。

 

そうしてやがて、何の気なしに立っているように見せて全神経を丸ちゃんの方へ集中していた私の意識を無情にも断ち切る声が聞こえた。

「ではAチーム、移動しまーす」

※前編に書きましたがエキストラは半数ずつ、A、Bのチーム分けをされています

 

遂に、神立ち位置から移動せねばならない時がやってきた。こんなに彼の近くにいられることはさすがにもうないのではないか。どうしようもなく後ろ髪引かれる思いで、しかし時間が押しているのか急がされ、陸橋を渡りぐるりと回りきった反対側へと移動し元いたところへ目をやると、彼らは全く見えなくなっていた。というよりいなくなっているように見えた。

 

僅かに脱力していると、助監督がAチームである我々に更に半数に分かれ分散するよう要求した。半数は今歩いて来た陸橋方面に散らばり、もう半数は、午前中に「買い物袋を手に階段を登りきったところではじめの連絡を受け取る美沙」のシーンで遠目に映る歩行者となっていた公園スペースへ。そこは先程の陸橋の角から見てちょうど反対側の正面だった。

私はそこの椅子に腰掛けていることにした。

 

見ていると今度はBチームの方々が先ほどの位置に配置されていた。要は交代。

ぼけっとそれを眺めていると、また同じ場所に白地にブルーストライプの衣装に変えた丸ちゃん、同じく衣装替えをした高畑さんが現れた。

遠目に映る公園スペースにいる人の顔など無論まともに映るまい。ここぞとばかり先程見ることが叶わなかった、待ち合わせをする彼らの演技を対岸からガン見したが、それも無論だが遠目のため細かい表情まではわからなかった。

※レポるまでもなし「デートもろもろ」待ち合わせ2回目のところです

 

カップルになれるかどうか、おそらく二度目か三度目の大切なデートの待ち合わせであるところの撮影は先程同様数回のテイクで終了、そしてまた移動を促す助監督の声。

かなり時間が経過していたが、これで終わりではないことを私は知っていた。「夏のシーン」があるので夏服を持ってくるよう、前日に追加オーダーの連絡があったからだ。

 

陸橋から奥へ歩き歩道の横幅がかなりある一本道のような場所に移動、そこに各々のバッグがシートの上に置かれていて、思った通り夏服に替えてくださいと指示された。

時間がない中バッグを抱えトイレに走る女子達もいたが、私はインナーに仕込んだヒートテックを捲れば全然見えないヒラヒラッとした服を持ってきていたので一緒に参加していた友人と互いのコートで交互に身を隠し合い、その場でトップスだけ夏服に着替えた。

一先ずダウンを羽織りブルブルしながら周りを見ると、若い男性などは本当に薄手のTシャツのみだったり、急いで戻ってきた女子の中にはセーラーの夏服のJKなんかがいたりした。若いとは素晴らしい。

 

そんなこんなのところに、待ちかねた主役とヒロインが登場した。二人とも大きなダウンを着ている。

私は彼らの随分後方の歩行者の役だった。まあそうだろう、そんなに同じ人材にばかり神立ち位置が割り振られるはずもない。

ただ運の良いことに今度は私の友人がなかなかの近距離に配置された。

 

私から見て二人は後ろ姿、その間に監督が立ち何やら話していた。談笑のような時間が短く過ぎ、説明、演技指導と思われれる雰囲気になっていった。

以下、この時の様子を私の代わりにガン見聞きしてくれた友人の精一杯をニュアンスで。

・監督はまたカレーの話(さっきウケたからテンドンか笑)

・監督「二人は手を繋いでもらいます」

   丸ちゃん「手汗が凄くてすぐベチャベチャになるんです」と気まずそうに高畑さんへ

   高畑さん「でも先に言っておいてくれてありがとうございます」と感じよく返す

・スタッフの準備待ちの間

   高畑さん「私大倉さんは知ってたんです。地元が一緒なので」

   丸ちゃん「え〜マジっすか」

ーなどなど‥とにかく仲良さげだったそうな。

 

そしていよいよ撮影へ。

彼らがダウンを脱ぐと当然だが思い切り夏服だった。丸ちゃんは生地の薄そうなTシャツ1枚。高畑さんはカットソーにサロペット。

そう、「デートもろもろ」で手を繋いでコロッケを歩きながら頬張る、あの微笑ましいシーン。遂にカップルとなれた二人、付き合って数ヶ月というところの距離感の撮影だ。

私は何も知らず後方から歩きながら見ていた。手を繋ぎながら歩き、楽しげに何かを食べさせあう二人。可愛らしいカップルの様子は特典映像の通りだが、離れた後方から追うように歩きつつ膨らませた私の想像より遥かに愛らしい出来栄えだった。

 

何度か撮り直しを経て映像チェックも済むと、二人はダウンを羽織らせられ、すぐ脇の横道へ入り見えなくなってしまった。あっと思う間もなくそれと同時に我々も集合させられた。

監督より、撮影はこれで終了であること、エキストラ参加を心から感謝しますということ、皆さん何処かしらに映っていますからという予告、 そして、色々ご心配お掛けしているかもしれませんが撮影は順調なのでご安心くださいというような一言には拍手が起きた。勿論の例の降板騒動のことだろう。しかし監督は力強く、良い映画になるので皆さん劇場に是非観に来てくださいと締めくくり、助監督によりこれで解散であることを告げられた。

 

監督の素晴らしい挨拶で気分は悪くなかったが、唐突に居なくなってしまった丸ちゃんへ‥何の心の準備も出来なかった。

彼らが居なくなった方向に行ってみると陸橋から下へ降りる階段が続いていた。ここを降りたのか。

その時「丸ちゃんが見える」というような声が聞こえて来た。振り向くと、女性が何人も走っていくのが見え、私と友人もそれに倣った。

着いたのは最初に集合した広場を見下ろせる場所。広場には大きなワゴン車やボックスカーが不自然に3台、密接して停まっていた。あの中?

しばらく見ていると突然1台のボックスカーの扉が開き、丸ちゃんと高畑さんとスタッフ1~2名が出てきた。少なからず巻き起こる歓声。彼らはすぐ向かいのワゴン車に乗り込んだ。

女性達がまだ歓声を上げる中、車は静かに広場を出ていった。

ー何とか見送ることが叶った。切ない気持ちを飲み込み、この先の撮影の無事を祈った。

  

* * * * * * * *

以上がドキュメンタリーレポ。

丸ちゃんが来るかわからず前日まで渋りつつ参加したエキストラは降臨した丸ちゃんがもたらす夢のような浮遊感と、緻密に計算し尽された段取りを目の当たりにし映画撮影をしているのだという現実が隣り合わせの、言わば非現実的な経験だった。だが丸ちゃんに会えたという喜びだけでない、主演を張る役者としての彼の佇まいを見られたこと、彼の友人で大切な作品の主演を依頼くださった監督が素晴らしい方だと知れたことなど、なんと得るものが大きかっただろう。本当に素敵な経験をさせてもらった。

 

そしてどうしてもいの一番に観ずにいられず参加した試写会。

登場人物皆が心の鍵を開け合い、則夫にすらそれを与えたはじめがようやく美沙の元へと帰り、そこから二人が太陽くん人形と迎えるラストの展開まで、会場は抑えた鼻をすする音でいっぱいだった。が、エンドロール、まず聴こえてきた応答セヨのイントロにおそらく全員涙腺を撃ち抜かれた。初聴がそこだったのだ。その歌詞、曲の運びにどうしようもなく心揺さぶられているところにあの「後日」が畳み掛ける。あんな意表をついた演出、素敵な回収の仕方、もじゃ犬のアップに被せるようにしてまた聴こえ出す応答、また始まるエンドロールのど頭に大きく上がってくる主題歌のクレジット。ずるい、と思った。もうその後のクレジットは涙で殆ど見えなかった。

そうして最後西田監督の名が通り過ぎる頃、鳴り終わりかける音楽に負けないくらいの嗚咽と鼻をすする音が会場中にこだましていた。もう抑えがきく人などなど誰もいなかったはずだ。

何とも異様で、それでいて温かい空間だったのを覚えている。

 

公開されてから計10回観に行ったが、何度観ようとも同じところで泣けた。

笑いとホロリとさせるシーンが交錯し、最後にどうしようもなく胸の奥が温かくなる作品だった。前園氏の内面を表しているのだろう可愛らしいレトロな前園邸は視覚的にも温もりがあった。タマとミキのアニメーションも。自分的には、失敗して泣いているミキちゃんを笑わせようと一生懸命なタマが丸ちゃん自身にダブって見えた。 

そして監督が色々な注文を出して書かれた応答セヨ。今となってはメンバー含め思うところのある曲になったかもしれないが、私にとってあの曲はどこまでも泥棒役者の主題歌、あのエンドロールでかかる時の為の、大貫はじめの曲だ。

 

こんなに素晴らしい作品が丸ちゃんの初主演作であることを心から誇りに思う。こんなにも素敵な経験、想いを与えてくれた泥棒役者に関わる全ての方々に感謝する。

 

そして!

明日1/21より、三度の西田・丸山タッグとなる、ドラマ「よつば銀行 原島浩美がモノ申す!」がスタートする。丸山担であり今や西田ファンでもあり泥棒役者ヲタクである私にとっては歓喜案件でしかない。

プロデューサーの稲田氏が「泥棒役者を見て西田さんとご一緒したくて」という想いから西田さん脚本ご担当が決まった経緯も感激ポイントだ。

あの丸ちゃんがメガネ男子となりエリート営業マン役をするのが何とも新鮮、そして西田さんが書くなら間違いなく面白い!毎週月曜夜10時は何が何でもテレ東リアタイだ。

 

ー丸ちゃんがコメンタリー最後に話していた「作品の遺伝子」

これだけ時が経っても、こんな駄文でも情熱を傾ける人間がいたのなら、繋がっていく縁もあるかもしれない。人生の続編で。

泥棒役者、まだ終わってないニャー!

 

最後におまけ ここまで読んでくださった方がもしいるのなら、長々すみません、ありがとうございましたm(_ _)m

 

 

 

 

 

【祝2018舞台化】映画 泥棒役者 エキストラレポ・ドキュメンタリー《前編》

ー2017年2月某土曜日ー

お目当ての彼は当日生放送、大阪にいるのはわかりきっていたし、贅沢なことに当選しておきながら参加するかどうかを前日まで渋っていた私は、当日早朝、ロケ現場である埼玉の川口駅に友人と降り立っていた。

 

天気は曇りと晴れの中間くらい、悪天候でなかったのは有り難いが当然真冬の気温、息が白い。

集合場所である広場の真ん中で待っていたスタッフさんへ受付を済ませ暫く待機。

そう、則男にヘッドロックされたはじめが連れて行かれたあの広場だ。
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下方、木と木の間にポツンとあるベンチ、あれこそはじめが放り投げるように座らされたベンチと思われる。

待ち時間の間に座ったベンチが他のベンチだったことが今思い返せば全く口惜しい(TT)

 

話を戻そう。

暫くその広場で待機し、スタッフさんが皆に説明を始めた時、集まった人数は恐らく50人程度しか居なかったように見えた。

自分達以外の参加者を横目で見たが、なるほど若い男性も中年男性もおり親子連れ、制服姿の女子高生もいる。

街中のシーン、色々な年代の人をバランス良く選出した感じだ。

 

そしてA、Bチーム二手に分けられた後移動、Aチームとなった我々は先導され陸橋の上に上がった。

荷物を置き遙か前方に視線を送ると、もう撮影準備は既に整っている感じに見えた。

 

様々なスタッフさんに囲まれて小柄な可愛らしい女の子がいる。

髪を直してもらったりしている様を見る限りキャストの方だろう。

(※その時点で主演以外のキャストはまだ発表になっていなかった)

 

‥誰?

かなり目で追ったが全然わからない。

 

そんなところに、助監督さんに紹介され西田監督が現れた。

おお‥!何度もネットで見たあの監督‥彼とも仲睦まじいと噂の‥!

私のミーハーと尊敬半々の眼差しの先、監督はエキストラ皆に実に感じよく挨拶し、撮影参加への感謝と、エキストラの出演が如何に重要かなどを熱っぽく語り、よろしくお願いしますと言って去っていった。

実に爽やかで大変好印象だ。

 

そこから助監督さんにバトンタッチ、本格的にエキストラそれぞれに立ち位置、おおまかな演技指導などし、皆それぞれ指示通りに移動や待機を開始する。

季節設定は秋口、厚手の上着は脱いだり、薄手のコートに着替えたりしなくてはならない。

私もヒートテック2枚を下に仕込んだとニットのみで指示された位置に立つ。

‥その間にも気になるのがさっきの女の子。

あまり視力が良くないのがこんな時呪わしい。

遠目にも、可愛らしいワンピを着て髪をカールさせているのが確認出来、しっかりめのメイクをしているのはなんとなくわかる。

監督と演技の打ち合わせかずっと話しているが、非常に親しげな雰囲気で屈託なく笑ったりしている様子。

 

‥誰かに似てるよなぁー‥

 

そんなことをボーッと思っている間に撮影準備が完了し、本番の声がかかり場が一気に引き締まる。

エキストラとしての最初の演技。

指示通り、女の子がいる曲がり角に向かって歩きながら途中のティッシュ配り役の方からティッシュを受取りつつ歩き去る。

 

カットがかかりその場に留まりながら、すぐそこの立ち位置になった例の子を盗み見る。

 

‥ん?

え‥この子‥高畑充希に似てる?

 

そこから同じテイクを繰り返したが、私の心は完全に高畑充希かと思われる女性に奪われていた。

 

高畑さんのビジュアルに関してはとと姉ちゃんのイメージが非常に強く、すっぴんに近いナチュラルメイクで清楚な印象が強かったから、えーこんなに可愛いのか!という(大変失礼ですが)驚きの眼差しでまじまじと見てしまった。

ヒールを履いてもなお小柄で、可愛らしいヒラヒラしたワンピースからほっそりした綺麗な脚がすらりと伸びている。薄手のストッキングだけだが、流石震えそうな寒さを微塵も感じさせない佇まい。

タイツの上にデニムを履き更にブーツで防寒してもちょっとブルブルしている己が恥ずかしくなってくる。

 

急に出現した(言い方)旬の主役級女優をドキドキしながらチラ見するのも束の間、次のシーンではなんと、彼女のすぐ後方から歩き出すという役割・立ち位置に配置された。

 

ここまで、本編を観た方はもうおわかりだろうが、待ち合わせのシーンの撮影である。

映画の場面にすると、なかなか来ないはじめを待ち侘びている美沙へ、仕事が入ったから行けなくなったというはじめからの連絡が入るところ。

 

カメラから程近い場所に佇む私のすぐ脇を、カメラテストやら何やらのためか何度も高畑さんは行ったり来たりし、その度本番の撮影よりもドキドキしその愛らしい姿を横目で追っていた。こちらに顔を向ける時などはあまりに近いため目が合ってしまったらどうしようと(片思いか)逆に緊張してこちらが目を逸らしてしまうほどの距離だった。

 

そうこうしている間に本番の声、急ぎ足で歩いてみて下さいという演技指導を忠実に守った私の演技の甲斐もあったのか(高畑さんの演技が99.9%に決まってるが)2テイクほどであっという間に終わり、今度はBチームと入れ替えで我々Aチームは遠目に映る歩行者となるべく陸橋の反対側まで移動した。

 

そこからは、買い物袋を手にした美沙が階段を上がりきったところではじめから「ごめん仕事長引いちゃって」という連絡を受け取る場面の撮影。

バランスよく分散して配置され、小さな公園スペースの椅子に腰掛けていることにした私は、演技をする高畑さんを遠目ながら真後ろから見ていた。

後方からは彼女が階段を上がったところでなにやらゴソゴソして立ち止まるだけのシーンに見えたが、それこそそのシーンは何テイクも繰り返していた。

気温の上がりきらない真冬の日に薄手のワンピースのみで監督の指導のもと何度も階段を上がり降りして演技を繰り返す彼女に、これが本当のプロというものなんだと舌を巻く思いだった。

 

その撮影も終わり、午前の部の撮影が終了した。陸橋を回り当初の広場へ戻っていく。

もうその頃には撮影に足を止める人だかりもだいぶ多くなってきていたが、やはり大部分の人は訝しげに高畑さんを見ている感じだった。誰だかわからないのであろう。

彼女はストーブの傍で大きなダウンを羽織って椅子に腰掛け、スタッフさんとにこやかに談笑しているようだった。

体は芯まで冷えてしまっただろうし、撮影が終わってもまだ足元もピンヒールのみだが、寒そうにも辛そうにも見えなかった。

凛とした女優魂を見た気がした。

 

そして西田監督。

イメージ、監督とは、演者への演技指導の時以外は大体の時間カメラ脇の椅子に座ってそこから指示を出しているようなことなのかと思っていたが全く違った。

カメラテストや本番と撮れた映像の確認以外はほぼ座っていることなどない様子で常に動き回り誰よりも色々なことを先回りしてやっているように見えた。

真剣な表情がとても素敵だった。

 

そんなことを反芻しつつ、ひとまず休憩に入る。

いただいたお弁当を広場のベンチで友人と食べながら(もう少し前方のベンチだったなら彼が腰掛けたベンチだったのに(TT)‥しつこいか)撮影の話をし、時間まで付近の店に入り暖をとった。

 

次は午後。

当然、気になることはたったひとつのことだった。

 

 

 

また同じ広場に集合、先ほどと同じ陸橋の上に上がる。

温まった体がまた冷えていくのが辛いだろうと覚悟していたがもう午後もいい時間、多少陽も出ていて寒さは幾分和らいでいた。

 

場所は先ほど高畑さんの撮影を行ったところと全く同じ陸橋の曲がり角。

早速立ち位置を振り分けられ、今度はカメラのすぐ脇を指示された。

周りはスタッフばかり、忙しそうに動き回る彼らを何となく眺めながら様子を窺う。

 

暫くそうして気付く。

高畑さんの姿が見えない。

それに、他のキャストと思われるような方も見受けられない。

それなりに時間をかけ、撮影の準備は殆ど整ったかに思えたが、演者がいないのだ。

監督もスタッフと話し込んだり、カメラテスト的なことが一切始まらない。

 

不自然なほどそうして時間が流れ、私の胸に或る期待が芽生え始めた頃と時を同じくして、スタッフがインカムらしきもので取っていた連絡がにわかに頻繁になり始める。

スタッフ数名が、陸橋から下を何度も気にするような素振りを見せ、監督もそのようにしながら何やら連絡を取っている。

ああこれは‥!と私が期待を最高に膨らませたその時。

 

私たちが上がってきたのではない、陸橋を渡りきった反対側の階段から、一度見たら忘れないようなもじゃもじゃ頭の男性がこちらへ歩いてくる。

 

うわ何あ‥ ‥れ‥ ??!!

 

コンマ何秒ですぐ気付く。そんな頭の下の見たくて仕方なかった、彼のその顔。

 

 

丸ちゃん!!!(T T)

‥てか何その頭!?

 

マネージャーさんもしくはスタッフさんらしき男性と話しながら、何やら特徴的な顔のようなものがプリントされた衣装を最初に目が合ったスタッフに見せ付けるようにし、小鼻にクシャッと皺を寄せるあの笑顔を見せた。

諸々の衝撃で電流に打たれたように動けないでいる私の真正面の先、彼は隣の男性と話しながら歩みを止めようとしない。

 

ーよく考えてみて欲しい。

動けないでいる人をA、その正面に向かってまっすぐ歩いてくる人をBとしよう。

BがAを避けるのが一番何事もなく問題ない。

でもBが避けないとしたならばどうだ。

誰もが思い描く通りの、Cの状況が出来上がるではないか‥!!

 

瞬時にそこまでを思い描き、私の取った行動は‥

 

動かない体を何とか起動し急いで自分の立ち位置からどいた。

僅か数秒後に、そこを丸ちゃんが通り過ぎて行った。

 

周りにはスタッフだらけ、話し込んでいてよく注意を払っていなかった、しかもそんなカメラ脇にエキストラが立ちすくんでいるとはまさか思わなかったのだろう。おそらくスタッフの一部のように見えたのだと思われる。

彼はそのまま歩き去り、後方に用意されていた椅子に腰掛けた。

 

後々考えると「あ!ごめんやで」「い、いいえ‥」的な妄想しか膨らまなかったCの状況、その千載一遇のチャンスを自ら回避した自分を、でもこれを読んでくれる人がもしいるなら賞賛してくれるだろう。輝かしい主演俳優のただでさえデコっぱちな額に万がいちタンコブでも作ったら大変なことだと判断したのだ。

(返すがえすも残念という気持ちもないではないがもう遅し)

 

しかしそれを残念がっている間もなく、私が一度どいたそのカメラ脇スペースに、あろうことかスタッフが何人もドヤドヤと押し寄せてきて、つんのめるようにその場を離れ、結果的に最初の立ち位置から何メートルも離れた場所に移動せざるを得なかった。

そこは丸ちゃんもよく見えず、立ち位置がなくなりどうしたものかと思っていると、女性スタッフさんが「大丈夫ですか?」と声をかけてきてくれた。

躓きかけながら急いで場所を開けた私の一部始終を見ていたと思われる。

私は「大丈夫です」と答え、そこはそれで済んだ。

 

だが程なくして、同じく「大丈夫ですか?」とかけてくる男性の声が聞こえた。

パッと見て驚いた。西田監督だったのだ。

一瞬で緊張しながらも「ハイ‥」と頷くと「ごめんなさいね」とすまなそうに軽く頭を下げ、離れていった。

 

女性スタッフから聞いたか、もしくは自分も見ていたか。

誰かを使わずに、ちゃんと自分の言葉で伝えに来てくれる監督の人柄に惚れた。

Cの状況が惜しかったなど一瞬でも考えた己を恥じた(その場は)。

 

 

***

またそこから準備が進み、午後の撮影が始まります。

満を持して登場した彼の撮影の様子をレポしようと思いますので後編をお待ちください!